はじめに
SESとして働いていると、ふと「このままでいいのだろうか?」と考える瞬間があります。案件の現場は多様で経験が積める一方、自分のキャリアがどの方向に進んでいるのか、迷いや不安を抱くのも自然なことです。
私自身もSESを経験する中で、「このままSESを続けていいのか、それとも転職を考えた方がいいのか」と悩んだことが何度もありました。今回は、そうした迷いを整理するためのキャリア選びの判断軸を、自分の体験を交えながら紹介します。
1. 案件の幅が広がっているか?
SESでの大きな魅力のひとつは、さまざまな案件に携われることです。インフラ構築、運用保守、クラウド、セキュリティなど、現場によって求められるスキルは異なります。
もしあなたがこれまで複数の現場を経験し、案件の幅が広がっているなら、それはキャリアにプラスです。スキルセットの多様さは、将来的に転職する際も大きな武器になります。
一方で、オンプレ環境の詳細設計から関わるなど責任ある業務を任されていたとしても、いつも同じフェーズや同じ環境での経験ばかりだと、「スキルが頭打ちになっているのでは?」という不安を抱くことがあります。
私自身も、最初の案件では詳細設計フェーズから関われましたが、それ以上のフェーズや今まで経験した環境と似ている構成だったため、「経験の幅が広がっていないのではないか」と感じた時期がありました。
ただ、その時の経験も「要件を詰める力」や「設計の再現性を高める力」として後から活きたため、幅が狭くても深く積んだ経験が無駄になることはないと実感しました。
2. やりたい技術に近づけているか?
キャリアを考えるうえで大切なのは「自分がやりたい技術に近づけているか」という視点です。
たとえば「クラウドに強くなりたい」と思っているのに、オンプレ環境の案件しか経験できていない場合、方向性がずれてしまうかもしれません。
私も最初は希望していたクラウド案件に入れませんでした。しかしその代わりに、自動化(Ansibleなど)を中心に経験することになり、思いがけず「インフラ効率化」のスキルを磨くことができました。
結果的にそのスキルは、クラウド案件でも役立ちました。クラウド環境でも「自動化を使用して構築・運用を効率化していく」という考え方は必要だからです。
つまり、希望案件に入れなくても「そこで得られる経験をどう活かすか」が重要なのだと思います。
3. 市場価値(スキル・資格・経験年数)は伸びているか?
キャリア選択を考えるとき、冷静に「市場価値」を見つめ直すことも欠かせません。
求人票を見ると「AWS経験〇年以上」「設計構築経験あり」といった条件が並んでいることが多く、SESエンジニアとして働く私たちにとっては意識せざるを得ないポイントです。
案件の面談では、実務経験を重視される傾向が強いです。知識を持っているだけでなく、実際に関わった業務で経験しているかどうかで市場価値が上がっていきます。
一方で、資格もある程度の目安になります。AWS認定やLPIC、CCNAなど、基礎を示す資格を持っていると「未経験の分野にチャレンジしやすい」武器になります。
重要なのは、自分の市場価値が右肩上がりになっているかどうかです。
「同じ作業を繰り返していてスキルが止まっている」と感じる場合、環境を変える(別案件や転職を検討する)タイミングかもしれません。
4. 将来像にSESが合っているか?
最後に考えるべきなのは「将来どんな働き方をしたいのか」です。
SESは多様な経験が積める一方で、クライアント常駐が基本であり、プロジェクトの裁量権を持ちづらい側面もあります。
「多様な現場を経験してスキルを積みたい」「いずれフリーランスになりたい」という人にはSESは相性が良いですが、「自社のサービスを育てたい」「社内SEとして腰を据えたい」という人にとっては転職のほうが合っているかもしれません。
私自身も「将来どう働きたいか」を考えたとき、SESのままでも十分キャリアを積めると思いましたが、「自分が主体的に案件を動かす経験」「システムの企画から構想する経験」はSESだけでは難しい部分もあると思います。
キャリアを選ぶ基準は、スキルや待遇だけでなく、将来像にSESという働き方がフィットしているかどうかを確認することです。
まとめ
SESを続けるか、転職するか。正解は一人ひとり異なります。
ただ、次の4つの判断軸を意識すると、自分のキャリアを整理しやすくなります。
- 案件の幅が広がっているか
- やりたい技術に近づけているか
- 市場価値(スキル・資格・経験年数)が伸びているか
- 将来像にSESが合っているか
SESは「経験の幅を広げられる」「実務を通じて成長できる」強みがあります。その一方で、キャリアが固定化されるリスクもあります。
だからこそ、定期的に棚卸しをして、自分の成長と将来像を照らし合わせながら判断することが大切です。

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