はじめに
SES(システムエンジニアリングサービス)で働くと、多くのエンジニアは「技術力さえあれば評価される」と考えがちです。
確かに技術力はエンジニアとしての武器になります。しかし、実際に現場で評価されるのはそれだけではありません。
むしろ SESという働き方だからこそ、コミュニケーション力が成果を大きく左右する 場面が多いのです。
私自身もSESとして複数の現場に参画し、「なぜ自分は評価されたのか」「なぜ契約延長に繋がったのか」を振り返ると、そこには必ずコミュニケーションの力がありました。
今回は、SESにおいてなぜコミュニケーションが必要なのかを、具体例を交えながら掘り下げていきます。
1. SESは「既存のチームに入る」働き方だから
SESの働き方の特徴は、すでに動いているチームに外部の一員として参画するという点です。
中途入社の社員や新卒と違い、SESは「プロジェクト途中から参加することが多い」ため、
最初に求められるのは 技術力よりも、チームに自然に溶け込むこと です。
SES現場で最初に求められること
- 挨拶や報告など、基本的な社会人マナー
- チームのルールを素早く理解し、合わせる姿勢
- 不明点を自分で抱え込まず、適切に質問する
私が初めて参画したプロジェクトでも、最初の1か月は「成果」よりも「雰囲気になじむ」ことを意識しました。
毎日の朝会で一言でも良いから進捗を話し、周囲に安心感を与えることを徹底したところ、
「この人はちゃんとコミュニケーションが取れる」と評価され、結果的に重要なタスクも任せてもらえるようになったのです。
2. 技術は一人で完結しないから
システム開発やインフラ構築は、一人で黙々と作業する仕事のように見えて、実際には 複数人で連携する前提 で成り立っています。
SES現場でよくあるコミュニケーションの場面
- 設計書や構成案をレビューしてもらう
- 運用の引き継ぎをする
- 障害発生時に状況を共有し、対応を分担する
特にSESの場合、担当範囲を明確にする力が大切です。
「どこまで自分の作業で、どこから先が他のメンバーなのか」をあいまいにすると、作業が重複したり漏れたりしてしまいます。
私自身も、ある現場で「進捗を報告しなかったために、同じ作業を別の人もしていた」というミスをしたことがあります。
そのとき強く感じたのは、「技術的なスキルよりも、共有や確認を怠らない姿勢のほうが大切だ」ということでした。
3. 信頼が次の案件を呼ぶ
SESは契約ごとに案件が変わることが多い働き方です。
つまり、「次もお願いしたい」と思ってもらえるかどうかがキャリアの継続に直結します。
実際に、私が契約延長や別案件を紹介されたときの理由は、技術的な成果よりもむしろ以下のような評価が多かったです。
- 報告や相談がしっかりしていて安心できる
- 他のメンバーと協力的に動いてくれる
- 不具合を隠さず、誠実に対応してくれる
これはSESにとって非常に大きなポイントです。
技術力はもちろん大切ですが、同じくらい 「一緒に働いて安心できる人」 であることが、長期的に見て案件を安定させる武器になります。
4. コミュニケーション力は技術にも活きる
一見すると「コミュニケーションと技術は別物」のように思えますが、実際は深く結びついています。
コミュニケーションが技術に与える良い影響
- 質問できる人は、理解が早い
- 他人の説明を理解できる人は、設計力が伸びる
- レビューや議論から新しい知識を吸収できる
逆に、黙って作業しているだけでは 自分の知識が広がらない というデメリットがあります。
たとえば私の場合、クラウド案件を希望していたとき、最初はオンプレの自動化(Ansible)の案件しかアサインされませんでした。
しかし、疑問点を積極的に周囲に質問することで「クラウドに応用できる自動化の知識」を学び、結果的に次のクラウド案件への道が開けました。
このように、コミュニケーションは「技術を学ぶためのブースター」になるのです。
5. SESならではの注意点
SESという働き方は、通常の正社員エンジニアとは少し異なる立場です。
そのため、以下のような点にも気を配る必要があります。
- 立場をわきまえる:お客様先の社員と同じように振る舞うと不自然。あくまで外部の協力者としての姿勢が必要。
- 情報共有の線引きを守る:社内情報を持ち帰らないなど、コンプライアンス意識も重要。
- 契約単位の評価を意識する:1案件の信頼が、次の案件に直結する。
技術だけでなく、こうした姿勢や態度が評価される点もSESの特徴です。
まとめ
SESで働くうえで最も大切なのは「技術力」だと考えられがちですが、実際には コミュニケーション力がキャリアを大きく左右します。
- SESは既存のチームに入る働き方だから、溶け込む力が必要
- 技術は一人で完結せず、共有や確認が必須
- 信頼が次の案件を呼び、キャリアを安定させる
- コミュニケーションは技術力を伸ばすきっかけにもなる
- SESならではの立場や注意点を理解することが重要
私自身の経験からも、「一緒に働きやすい人」と評価されることがSESで長く活躍するカギ だと実感しています。
これからSESとしてキャリアを築こうと考えている方は、ぜひ「技術+コミュニケーション」の両輪を意識してみてください。
そうすることで、より多くの案件に挑戦でき、結果的に市場価値の高いエンジニアへと成長できるはずです。

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